「学校に菜園があったら子どもも大人も笑顔になる」その理由とは?【つながる菜園プロジェクト】

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以前、ササハタハツ新聞でもお伝えした「ササハタハツまちラボ(以下まちラボ)」による「ササハタハツピープルまちづくりサポート(以下ササハピ)」事業がスタートし、認定が7つ、登録が7つ、計14のプロジェクト(2021年3月現在)が動き出しています(※1)

認定プロジェクトのひとつである「つながる菜園プロジェクト(以下つながる菜園)」は、ササハタハツエリアの学校内に「菜園」を作ることで、「すべての子どもたちへの平等な居場所づくり」「地域コミュニティづくり」、さらには「食と教育(ICT教育を含む)の連携」を目指して活動しています。
「菜園」がなぜそんなさまざまな役割を担う場になるのでしょうか。自身の経験をふまえてプロジェクトを立ち上げたリーダーの佐々木桐子さん、佐々木さんの思いに共感して参画を決めたサブリーダーの荒島智貴さんにお話をうかがいました。

 

すべての子どもにとって平等な「居場所」になる「学校菜園」を作りたい

(右)佐々木桐子(ささき・とうこ)さん:初台生まれ、初台育ち。つながる菜園プロジェクトのプロジェクトリーダーであり菜園コミュニケーター。小5、中2の子どもの母でもある。(左)荒島智貴(あらしま・ともき)さん:愛知県生まれ。初台出身のパートナーとの間に子どもが生まれたのを機に初台在住に。つながる菜園プロジェクトのサブリーダーであり菜園コミュニケーター。小6の子どもの父でもある。

(右)佐々木桐子(ささき・とうこ)さん:初台生まれ、初台育ち。つながる菜園プロジェクトのプロジェクトリーダーであり菜園コミュニケーター。小5、中2の子どもの母でもある。
(左)荒島智貴(あらしま・ともき)さん:愛知県生まれ。初台出身のパートナーとの間に子どもが生まれたのを機に初台在住に。つながる菜園プロジェクトのサブリーダーであり菜園コミュニケーター。小6の子どもの父でもある。

ササハタハツ新聞
最初は佐々木さんおひとりで立ち上げたプロジェクトと聞きました。立ち上げのきっかけは何だったんですか?

佐々木さん
今から8年くらい前に「エディブル・スクールヤード」(※2)の取り組みを知ったのが最初です。1995年にカルフォルニア州の公立中学校から始まったもので、学校の中にある菜園がいろいろな形での学びにつながることに衝撃を受けました。その後、日本でも「エディブル・スクールヤード」を実践している多摩市の小学校があるのを知って、学校見学に行ったのが第2の衝撃でした。

多摩市の小学校の取り組みを知った頃、佐々木さんが行っていたのが子どもたちと公園など自然の中で食事をする「青空パーティー」という食育活動。「子どもたちに食べることを楽しんでほしい」「テーブルを囲む温かみを知ってもらいたい」という思いから始めたものとか。

多摩市の小学校の取り組みを知った頃、佐々木さんが行っていたのが子どもたちと公園など自然の中で食事をする「青空パーティー」という食育活動。「子どもたちに食べることを楽しんでほしい」「テーブルを囲む温かみを知ってもらいたい」という思いから始めたものとか。

ササハタハツ新聞
その2つの衝撃をきっかけに、「渋谷区でも学校菜園を!」という思いが芽生えたんですね。

佐々木さん
そうですね。以来、ひとりプロジェクト状態で仲間づくりを続けてきたのですが、仕事の関係で一年間「異才発掘プロジェクトROCKET」(※3)に関わったことも大きかったです。教室に行けない、学校の授業についていけない、字の読み書きが難しいなどの事情で学校生活に困難を抱えた子どもが全国から集まり、さまざまなプロジェクトへの参加を経てどんな変化が見られるかを追っていくもので、私が担当したのは菜園学習のプロジェクトでした。毎日水やりをしなくても作物が枯れないためにはどうしたらいいか相談すると、子どもたちがタブレットやスマホで調べて「こうしたらいいって!」と提案してくれるんです。どうしてこんなに前向きに楽しんで活動できる子どもたちが学校では苦しいのか、理由を考えると、その子たちにとって楽しいと思える場所、学びたいと思える場所が、学校の教室ではなく菜園だったからだと気づいて、地域の学校にもそういう場所が必要だと強く確信したんです。

ササハタハツ新聞
教室にいられない、授業についていけない子にとって、学校の中にある「菜園」がひとつの「居場所」に?

佐々木さん
はい。そこから「どんな子どもも取り残さない。すべての子どもたちに平等に安心できる居場所づくりを」というコンセプトの柱がはっきりしました。どの子にも「ここにいていいんだ」と思える場所、自分の意志で行きたいと思える場所が学校の中にあってほしい。それは教室かもしれないし、音楽室かもしれないし菜園かもしれないけど、選択肢のひとつとして「菜園」もあったらいいなって。

ササハタハツ新聞
佐々木さんが考える「学校菜園」は、先生と子どもだけで運営するのではなく、地域の方々も参加できる「地域に開かれた場」なんですよね。

佐々木さん
そうなんです。子どもが菜園に行くと地域の方がいて、雑談するうちに「こんなふうになりたいな」と思える出会いの場にもなればと。作業自体はひとりで没頭していても、近くには誰かがいて、風も吹くし、日も当たる。時には鳥も鳴いて、虫もいる。土に触れる触感も味わえる。いろいろな刺激を受けることができると思うんです。また、地域にはたくさんの世代、それぞれ背景の違う方がいます。子どもからお年寄りまで多世代が出会える場所が学校の中にあれば、学校も地域に開かれていきますし、より人々がつながりあえて顔の見える街になると思います。

 

開かれた「学校菜園」は地域の多世代をつなぐ場にもなる

ササハタハツ新聞
荒島さんはどういうきっかけで「つながる菜園」に参画することに?

荒島さん
佐々木さんとは同じ保育園のママ友・パパ友で、子どもどうしが小学生になって同じ柔道の道場に通い始めたのをきっかけによく話すようになりました。そのうち柔道を教えてくれていた谷口和規先生が退職されて子ども向けのフィジカルトレーニング教室を始めるということで、谷口先生も交えて3人で飲みに行くことが増えたんです。

佐々木さん
荒島さんも谷口先生もいい具合にアツい人たちで、話しているうちに「私の話も聞いてもらっていいですか?」と「つながる菜園」のことも語ってみたら、2人とも「やりましょう!」と言ってくれて。

荒島さん
佐々木さんも熱量のある人じゃないですか?(笑) 僕は座右の書が『7つの習慣』で、「『7つの習慣』を体現して世界に届ける人間である」「家庭での成功をサポートして世界を笑顔と元気にする」という個人ミッションがあるんですが、「つながる菜園」の話を聞いて、学校に菜園があったらきっと子どもの笑顔を増やすことになると思えて、100%賛同できました。菜園そのものに興味を持ったというより、子どもが主体的に、自発的に生きていく環境を提供したいという感覚で、「菜園」がそのツールになるんだと感じました。

ササハタハツ新聞
コンセプトそのものに共感されたんですね。

荒島さん
そうです。僕「つながる」って言葉が好きで。今、息子と僕たち夫婦と妻の両親と三世代で住んでいる大きな理由も、世代間がつながってコミュニケーションができるからなんです。自分の家庭だけでなく、毎年学校に入学してくる子どもたちと、だんだん年をとっていく自分たちがつながっていける場所が地域にあったらいいというのも常に思っていたので、そこもバッチリつながるんですよ。

佐々木さん
多世代の交流促進は、子どもの居場所づくりと並んで「つながる菜園」の2大コンセプトなので。

荒島さん
佐々木さんにつけてもらった「菜園コミュニケーター」という肩書きも気に入ってます。みんな子どもの教育に対してそれぞれに思いがあるけど「あっちが正しい」「こっちは間違っている」としてしまったら、子どものよりよい成長につながらないじゃないですか。そこをコミュニケーションでつなげる役割があったらいなと思っていたので。

2019年秋には、仲間づくり活動の中で縁がつながった長野県伊那市へ友達家族に声をかけて農泊ツアーを実施。着実に仲間づくりとコンセプトにつながる活動を続けてきました!

2019年秋には、仲間づくり活動の中で縁がつながった長野県伊那市へ友達家族に声をかけて農泊ツアーを実施。着実に仲間づくりとコンセプトにつながる活動を続けてきました!

「学校菜園ができた後のササハタハツが見てみたい」その思いだけなんです

ササハタハツ新聞
お二人それぞれのササハタハツエリアへの思いを聞かせていただいてもいいですか?

佐々木さん
私は生まれも育ちも初台なので、育ててもらったふるさとがここ。小学校から帰ると、祖父に連れられていとこたちと一緒に、初台から笹塚まで緑道を散歩してたのが思い出深いです。

ササハタハツ新聞
初台から笹塚までって片道2kmくらいありません⁉

佐々木さん
そうなんですよ。当時笹塚に『サーティーワンアイスクリーム』の路面店があったので、笹塚に着いて『サーティーワン』でアイスを買ってもらうのが最高の贅沢だったんです。アイスのご褒美があったから歩けました!(笑)

荒島さん
僕は妻の実家が初台だったのがこのエリアに住み始めたきっかけですね。最初は「渋谷区に住む」ことは「センター街に住む」イメージだったので「住むところあるの?」って妻に聞きました(笑)。実際に訪れてみたら大都会にある田舎のような雰囲気がすごく好きになりました。地域のゴミ拾いに小学生からおじいちゃんおばあちゃん世代まで参加するところも好きですね。

ササハタハツ新聞
ササハピの認定プロジェクトとしてスタートして、今やろうとしているのはどんなことですか?

佐々木さん
ササハタハツエリアの学校内に菜園を設置してもらうため校長先生と話し合いを進めています。時間はかかるかもしれないけど、校長先生と対話を重ねて、いい関係を作っていくことが一番かなと。

荒島さん
時間がかかることがダメなことではないですよね。そこは野菜づくりも同じなのかなって。すぐに収穫できるものがいいものとは限らない。

佐々木さん
確かに! 通じるところがあるかも。私がなぜ8年間あきらめずに「つながる菜園」を続けてこられたのかは、自分でもよくわからないけど、ひとつ言えるのは、「ササハタハツエリアに学校菜園ができたその後の世界をとにかく見てみたい」という強い想いがあります。ほかのプロジェクトをやってる人たちも、そういう「たったひとつの想い」で動いているのかなと感じています。

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佐々木さんが思い描く地域をつなぐ「学校菜園」ができたあとのササハタハツは、今学校に行くのに困難を感じている子どもたちの居場所になりさらに、地域の人々が互いにつながる場所になる……。絶対にいい未来しか思いつきません。「学校菜園」を軸に「やるべきこと」「やってみたいこと」を考えたというボードも見せていただき、さらにワクワクが盛り上がりました。

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ササハタハツ新聞がナビゲーターを務める『渋谷のラジオ』「渋谷商店部 お店に行こう!【幡ヶ谷・笹塚ブロック】」(毎月第一火曜 15:00~15:55)
「つながる菜園」プロジェクトリーダー・佐々木桐子さんゲストの回はこちらからアーカイブをお聴きいただけます。
https://note.com/shiburadi/n/ndd4f9b4d166d?magazine_key=ma3052828792d
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※1認定プロジェクトと登録プロジェクトの詳細は「まちラボ」のサイトをご参照ください。「ササハタハツ新聞」も認定プロジェクトのひとつに採択いただきました。
https://www.sasahatahatsu.jp/

※2 学校内に菜園を設置し、ともに作物を育て、調理し、食べるという体験を通じて教育を行う取り組み。菜園の運営は生徒と教員だけでなく、地域ボランティアも参加。1995年にカリフォルニア州の公立中学校で始まり、全米各地の学校に広がっています。日本では東京都多摩市の公立小学校でも実践されています。

※3 東京大学先端科学技術研究センターと日本財団が共同で2014年よりスタートさせたプロジェクト。ユニークな個性を持つために、今の学校現場や学校教育になじめない子どもたちに新しい学びの場所と自由な学びのスタイルを作り出すサポートを行っています。
https://rocket.tokyo/

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