子どもたちの安心安全な食事と居場所をつくる、こども食堂「渋谷区おばさん」

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「こんにちは~!」

午後3時、子どもたちの声がにぎやかに聞こえるここは、なんとお寺。 渋谷区代々木にある立正寺では、月に一度、こども食堂「渋谷区おばさん」が開催されています。

西参道からほど近い、法華宗本門流の立正寺。地域交流を大切にし、節分会や花まつりをはじめ、地元の人々が気軽に参加できる開放的なお寺として親しまれています。

食事だけじゃない!子ども向け説法やダンスも楽しめる「子ども食堂『渋谷区おばさん』」

「渋谷区おばさん」では感染症対策を徹底して行い、立正寺の1階にある食堂と2階の本堂で、毎月こども食堂を開催しています。

10月のこども食堂には、小学校を中心に幼稚園・保育園まで15名ほどの子どもたちが集まりました。みんなで楽しく食事をするだけでなく、子ども向けのやさしい説法や思いっきり体を動かせるダンスレッスン、さらには保護者向けの「醬油麹講座」など盛りだくさんの内容です。

お寺にやってきた子どもたちは2階の本堂へ。畳敷きの広い本堂が開放されており、子どもたちは思いっきり駆け回っていました。しかし、僧侶の吉崎さんが声をかけると、思い思いに遊んでいた子どもたちがすぐに集まり、きちんと正座して吉崎さんのお話に聞き入っていました。

さっきまで走り回っていた子どもたちが、きちんと正座して説法を聞いています。立正寺住職の息子さんである僧侶の吉崎さんも、代々木の地で育ちました。

お説法を聞いた後は、ササハタハツまちラボ認定プロジェクトの「ママぷら」によるダンスの時間です。音楽にあわせて踊るダンスに、子どもたちは大興奮! 未就学児から小学生までと年齢の幅はあるものの、みんなが楽しそうに体を動かしている姿が印象的でした。

本堂が今度はダンス会場に! 全員で思いっきりダンスを楽しみました。

子どもたちがダンスを楽しんでいる時間に、お母さん向けの醤油麹の講座も行われました。渋谷区おばさんのメンバーである講師の磯部真優さんが前日に出産したため、なんと産院のベッドからオンラインで指導。米麹と醤油を使い、つくった醤油麹を瓶詰にしてお持ち帰りしました。

渋谷区おばさんは、親子で楽しめるこども食堂として、お母さん同士の交流の場にもなっています。

食材にこだわった美味しい食事をみんなで「いただきます」

全身を使ってたっぷり運動した後は、いよいよ美味しいご飯です!

2階の本堂から降りてきた子どもたちは、手を洗って、1階の食堂に集合します。この日のメニューは、野菜などの具がたっぷり入った4種のおにぎりと、けんちん汁です。好きなおにぎりを自分で選び、席につきます。僧侶の吉崎さんから、食事前の短いお話を聞いた後、全員で「いただきます!」をして、食事がスタートしました。

「渋谷区おばさん」やボランティアのスタッフがつくってくれたご飯を夢中で食べる子どもたち。その姿を見て、お母さんもにっこり。
10月のメニューは、醤油麹を使った野菜たっぷりのけんちん汁と、具沢山のおにぎり。

「おいしい!」と言いながらニコニコと食べる子、夢中でおにぎりを2つとも食べてしまう子、けんちん汁をゆっくり味わう子、どの子の表情もうれしそうです。食堂の席同士はアクリル板で隔てられているものの、お友だちとみんなで食べる食事は格別のようです。この日は少しおにぎりが余っていたので、お代わりをして3個めのおにぎりを取りに行く子もたくさんいました。

午後3時から開始したこども食堂は、午後5時に終了。子どもたちは迎えに来たお父さんやお母さんに連れられて、満足そうに帰っていきました。

10月の「渋谷区おばさん」には、「渋谷区こどもテーブル」を支援する青山学院大学の学生ボランティア団体「しぶっこ」のメンバーも駆けつけ、おにぎりづくりを手伝っていました。

安心な食事と子どもの居場所づくりを提供する「渋谷区おばさん」

この素敵なこども食堂を運営しているのは、「渋谷のおせっかいなおばさん」を自称する「渋谷区おばさん」です。

右から、「渋谷区おばさん」代表の吉村あきねさん、メンバーの加藤なな子さん、ボランティアの鹿取愛弓さん。吉村さん、加藤さんと磯部真優さんら4名がスターティングメンバーとして集い、「渋谷区おばさん」を結成しました。

「渋谷区おばさん」が立正寺でこども食堂をスタートしたのは、コロナ禍の2021年の春。宅配生協の生活クラブで知り合った渋谷区在住のメンバーが食についての勉強会などを行ううち、「子どもたちに、安心安全な食事をしてほしい」「地域で子どもから大人までが楽しめる居場所をつくりたい」という思いから、手探りで方法を模索し、こども食堂「渋谷区おばさん」が誕生しました。

しかし、2021年春以降は新型コロナウイルスの感染者数が日ごとに増えていき、4月にスタートしたこども食堂の活動は、5月には休止する事態となってしまいました。
「持ち帰り用の食事を配る方法もありましたが、たんに食事の提供をしたいわけではなく、一緒に食事をする場や時間、何よりも人との関わりを大切にしたかったのです」と、代表の吉村さんは話します。

「渋谷区おばさん」では、安心安全な食材にこだわった食事を子どもたちに提供するとともに、地域で活動する方々とのつながりを大切にしています。

「ダンスレッスンをやっていただいている『ママぷら』さんも、私たちと同様に居場所づくりを大切にしている団体です。会場をお借りしている立正寺さんも、節分の豆まきなど、地域の方との交流を大切にしています。そうした方々と一緒にやっていくことで、よりよい形で開催ができたと思います」(加藤さん)

説法では、きちんと正座をして話を聞く子どもたち。「女子を中心に年上の子たちは、年下の子を気にかけて、『座ろうね』などと声がけをしてくれますね」と吉村さん。お手伝いしたい子にはお願いして、一緒に受付などをやってもらっているそうです。
季節感なども取り入れてメニューを考えています。7月の「七夕まつり」はどのメニューも大人気だったそうです。
毎回のメニューを考えるのは吉村さん。「おかわりを沢山してくれたり、偏食の多い子が美味しそうに食べてくれたりすると嬉しいですね」と話してくれました。

「私たちは、昔から渋谷に住んでいたわけではないので、最初はあまり地域の方とのご縁がありませんでした。こども食堂も、私たちの力だけではできなかったと思います。食材を提供してくださる方々、ボランティアとして手伝ってくれる保護者や学生さん、地域の方々、コラボしてくださる方々……それぞれの才能を持った人たちが持ち寄って大きな力になっていると感じます。それは、『ちがいを ちからに 変える街』とあるように、とても渋谷区らしいところだと思っています」(加藤さん)

今後はこども食堂の回数を増やし、子どもたちが楽しめるお祭などを行っていきたいという「渋谷区おばさん」。
11月13日には、射的などの遊びも楽しめる「秋まつり」が開催されるそうです(定員につき、受付は終了)。12月以降の開催については、毎回「渋谷区こどもテーブル」のサイトで参加者募集を告知していますので、お近くの方はぜひチェックしてみてください。

11月13日に開催される「秋まつり」。数日で50名の定員が埋まってしまうという人気ぶりです。

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