「まちラボ」「ササハピ」「388FARM」が、ササハタハツを大きく動かす【2020年度「第2回ササハタハツ会議」レポート】

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9月25日(金)18時から開催された「第2回ササハタハツ会議」。
前回同様3密を避けるハイブリット開催(※1)の形態がとられ、
LINE CUBE SHIBUYA(渋谷区公会堂)、笹塚駅前区民施設、
オンライン会場の3ヶ所に
それぞれ約25名ずつの参加者が集まりました。
会議は3部構成。
第1部は【ササハタハツまちラボ】(以下まちラボ)について、
第2部は【388FARM(ササハタハツファーム)】
(以下388FARM)について説明があり、
第3部ではグループ討議が行われました。

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会議に先立ち、渋谷区まちづくり第一課長の齋藤さんよりあいさつがあり、「前回発表した玉川上水旧水路緑道の新コンセプトプラン【388FARM】のより具体的な説明や、7月に設立された【まちラボ】とその新事業のご案内をさせていただきたい」と述べられました。

 

まちづくりの仕組みに新たな展開

まちづくり第一課より説明がありました

まちづくり第一課より説明がありました

新しいまちづくりの仕組みとして今年7月に設立された【まちラボ】。設立メンバーは渋谷区のほか、ササハタハツエリアを鉄道でつなぐ京王電鉄株式会社と、まちづくりに関する知見が深い一般社団法人渋谷未来デザイン。三者が協力しながら、エリアでの暮らしの質の向上を目指すプロジェクトの活動支援等を行うとのことです。(※2)

「ササハタハツまちづくりフューチャーセッション」で様々なプロジェクトが生まれた経緯から、区としてこの盛り上がりを継続して支援していきたいという思いに至り設立につながった。

「ササハタハツまちづくりフューチャーセッション」で様々なプロジェクトが生まれた経緯から、区としてこの盛り上がりを継続して支援していきたいという思いに至り設立につながった。

さらにササハタハツでの主体的な活動を応援する事業【ササハタハツピープルまちづくりサポート(以下ササハピ)】について、制度や支援内容、9月25日から公募が開始されたことなどが発表されました。
まちづくり第一課では【ササハピ】に関する相談を随時受け付けているそうです。
詳細はこちら▼
「渋谷区 ササハタハツまちづくり」

 

【388FARM】への意見に区が回答

公園課より説明がありました

公園課より説明がありました

前回6月のササハタハツ会議後に実施したアンケートで出された意見や質問に対して、区が回答をしました。

●過去のセッションを通してもこれまで「農」の議論はなかったのではないか?
これまでに開催したフューチャーセッションや緑道ワークショップの中で、マルシェや畑を作りたいなど、緑道で「農」や「食」に関わることをやりたいという意見はたくさんあった。もちろん、「農」以外の活動についても“FARM”という大きなコンセプトの中で皆様と一緒に育てていければと考えている。

●土壌の安全性について
今後必要な調査を行ったうえで結果に応じて土壌改良の改善策について検討をしていく。

●既存の樹木や施設の機能について
サクラなどの老朽化も多く見受けられるので、安全性や必要性について調査を行ったうえで検討していく。

●既存の子どもの遊び場について
子どもの遊び場としての機能は公園にはなくてはならない要素の一つなので、整備後も子どもたちがのびのびと過ごせるような緑道にしていきたい。

●世田谷区との連携について(※3)
行政同士の打ち合わせを開始した。

●農作物の管理
菅理運営の仕方についても皆さんと一緒に考えていきたい

●野菜を植えてよいのか
条文等によるルールはないので、こちらの皆さんと一緒に維持管理のやり方を含めたルール作りを進めていきたい。

●自転車の通行について
今のところ渋谷区の都市公園条例で公園の管理に支障のある行為は禁止しており、安全性の観点から通行を禁止している。

その他、子ども中心のコミュニティと相性がよさそうといった意見や今後の担い手やルールづくり等についてのコメントなど未来志向な意見も見られたとのこと。
具体的な整備内容は来年の春あたりの発表を目指しているそうです。

 

【388FARM】は地域を育て、育み、未来を耕す場

前回のネーミングやコンセプト発表から“緑道を全面的に農園にする”との印象を受けた人も多かったことを受け、改めて田根剛さん(※4)から“FARM”というコンセプトに至った経緯などの説明がありました。

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田根さんは「コンセプトの出発点は、渋谷区が目指す“コミュニティが生まれる場”の形成で、それを緑道でどのように実現していくかというところ。これまでのセッションやワークショップ等で出た意見、希望、要望、問題点や課題、さらには緑道がかつて人々のライフラインとしての機能を担ってきたという歴史や考古学的な観点からの考察もふまえ、検討を重ねた。そうして導き出したのが、今回の【388FARM】である」と述べ、より具体的なイメージの共有として、世界各地においてコミュニティ活性化のために「農」が活用されている事例も紹介されました。

今回提案した“FARM”は単に農作物を育てる場という意味ではなく、地域を育て、育み、未来を耕すという広義の意味としてとらえた“FARM“であるとして、10個のテーマを発表。
・FARMはコミュニティを育てる(FARM BRINGS COMMUNITY )
・FARMは多様性を育てる(FARM BRINGS DIVERSITY)
・FARMは食を育てる(FARM BRINGS FOOD)
・FARMは土壌を育てる(FARM BRINGS SOIL)
・FARMは水を育てる(FARM BRINGS WATER)
・FARMは経済を育てる(FARM BRINGS ECONOMY)
・FARMは道徳を育てる(FARM BRINGS ETHIC)
・FARMは安心を育てる(FARM BRINGS SAFETY)
・FARMは笑顔を育てる(FARM BRINGS SMILE)
・FARMは人を育てる(FARM BRINGS PEOPLE)

その後、質疑応答では「前回の説明で緑道をすべて畑にするのかと懸念したがコミュニティを育む事が土台になっていることがわかって安心した」といった声が聞かれました。その他、以下のようなやり取りも。

参加者
野菜だけでなく木々の管理も考えてもらいたい。
田根さん
農作物が育たない時期に緑道がさみしくならないよう植物も植え、四季折々の緑を感じながら農作物を育てられるような場を提供したいと考えている。また樹木の健康状態を調査し、なるべく既存樹木を残していきたい。

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参加者
緑道の環境を考えると様々な汚染や日照の問題があり、農園に適した場にするには初期投資がかかりそうな印象がある。緑道再整備案として開渠の復活や公園の充実など農園の他にも可能性があったと思うが、なぜ農園になったのか?
田根さん
農園以外にも100以上の案があったが、コミュニティの形成を核としたまちづくりをしたいという区の思いや継続性、安全性、運営費用や初期投資がどのぐらい地域の人々の喜びや文化形成に還元できるかという視点、地域性の生かしやすさ等を総合的に検討した結果、農園が最適だと考えた。

参加者
生産緑地との違いが知りたい。また、都内には水と緑が一体となった緑道が多くあるがそれらとの違いも知りたい。
田根さん
生産緑地は個人の持ち物であるのに対して、今回の【388FARM】は地域の持ち物であり、地域の夢や希望をかなえていく公共の場だととらえている。収穫量や何を植えるか等の運用管理も、地域の人々が専門家のアドバイスを元にみんなで一緒に作っていくことが大切で、その過程がコミュニティの形成につながるとも考えている。
また、他の緑道との違いという点では、“FARM”というコンセプトを持たせた緑道はまだどこでもやっていないので、世界でも類を見ない渋谷区らしいプロジェクトにできるのではないかと考えている。

 

参加者からの意見を緑道整備案に反映

第3部では、これまで区に寄せられた緑道整備に関する意見から「農と食」「交通・環境」「地域イベント・文化・歴史・芸術」「健康・福祉・スポーツ・教育」「交流・にぎわい・経済・産業」の5つのテーマを設定。LINE CUBE SHIBUYA会場、笹塚会場、オンライン会場それぞれでグループ討議が行われました。

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いくつかのグループは討議内容の発表を行いました。ここで出た意見は緑道整備案に活かされることが検討されるそうです。

LINE CUBE SHIBUYA会場での「地域イベント・文化・歴史・芸術」グループの発表。音楽イベントや「農」に関連した祭りの開催などの意見が出ました。

LINE CUBE SHIBUYA会場での「地域イベント・文化・歴史・芸術」グループの発表。音楽イベントや「農」に関連した祭りの開催などの意見が出ました。

笹塚会場の「健康・福祉・スポーツ・教育」のグループの発表。カフェ、教育の場、芝生で寝ころべる場所、インクルーシブ公園など多様な人々がそれぞれに楽しめる居場所づくりが出来たらいいという意見などが出ました。

笹塚会場の「健康・福祉・スポーツ・教育」のグループの発表。カフェ、教育の場、芝生で寝ころべる場所、インクルーシブ公園など多様な人々がそれぞれに楽しめる居場所づくりが出来たらいいという意見などが出ました。

グループ討議の最後には昨年度からササハタハツエリアのまちづくりに関わっている土木デザイナーの大藪義久さん(※5)と日本大学理工学部建築学科助教の泉山塁威さん(※6)、そして田根さんが感想を述べました。

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大藪さん
世代、性別問わず多様な皆さんが多く集まり議論を交わすところが渋谷区らしくてすばらしいと感じました。皆さんから出た意見をしっかり受け止め、実現できるようなハードづくりに活かせればと思います。また、アイディア実現のための議論も続けていければと思いました。

 

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泉山さん
今まで通り過ぎていただけの緑道からみんなで活動する場へと変化する可能性と、変えていきたいという皆さんの熱量をとても感じました。今後緑道が楽しい時間を過ごせる場になれば良いと期待しています。

 

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田根さん
皆さんの活発な議論を聞きとても感動しました。これだけ熱を持って自分たちの地域を考える皆さんの思いこそが地域の力だと思います。公共の力というのは個々の思いが集まって初めて実現できること、人の思いや言葉が未来を作ることを常々体感しているので、皆さんも未来を作るという意識をもって議論を続けていただければと感じました。

 

出張座談会が開催されます

緑道再整備案については、区の職員や地域の方々と意見交換ができる場「388出張座談会(仮)」が10月中、ササハタハツエリアの以下の3か所で開催されます。

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事前申し込みは不要で、開催日時に直接会場まで行けばいいそうです。

笹塚駅前区民施設(多目的室B)10月15日(木)午前10時~午後5時
初台区民会館(大集会室)10月20日(火)午後5時30分~7時30分
地域交流センター西原(区民交流室B)10月23日(金)午後2時~7時

なお、次回のササハタハツ会議は11月頃に開催予定です。

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最後に渋谷区公園課長の中村さんがあいさつされ「私たちが作りたいのは、集う皆様のコミュニティが活性化されるような場。それが地域の方にとって誇りになるようなまちづくりにつながればと考えています。緑道整備に関してご意見がある方もまだ多くいらっしゃると思います。10月に開催予定の座談会では区の職員だけでなく地域の皆様同士も活発な意見交換ができる場にしたいと考えていますのでぜひお越しいただければと思います」と述べ閉会となりました。

LINE CUBE SHIBUYA会場にて記念撮影。撮影の一瞬だけマスクを外していただきました。

LINE CUBE SHIBUYA会場にて記念撮影。撮影の一瞬だけマスクを外していただきました。

【388FARM】が目指すのは
地域のコミュニティの活性化
ということがわかり、
より理解が深まった今回。
また座談会の開催を決めるなど
地域の人たちに誠実に向き合おうとする
区の本気度もうかがえました。

そして、ついに【まちラボ】【ササハピ】が始動!
ササハタハツのまちづくりがいよいよ
新たな局面に入ったと感じました。

 

 

※1 多拠点で同時に開催し、それぞれの会場を映像と音声でつなぐ。

※2 ササハタハツまちラボ設立プレスリリースhttps://www.city.shibuya.tokyo.jp/assets/kankyo/000050232.pdf

※3 笹塚~幡ヶ谷間の玉川上水旧水路緑道は一部世田谷区が管理する区間がある。

※4フランス・パリを拠点に活躍する建築家。緑道再整備案の植栽デザイン、照明デザイン、建築デザインなどの基本設計を担当。

※5 全国で公共空間のデザイン・設計をする建築家。過年度の緑道ワークショップから参加されている。

※6 公共空間や道路空間等の使い方を研究する専門家。2019年度「ササハタハツまちづくりフューチャーセッション」の「まちラボディレクター」。
参照記事:https://shhfan.com/mrizumiyama.html/

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