まちの魅力を活用して地域ブランド構築につなげる~人がつなぐイベントづくり~

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今年度の「ササハタハツ(仮称)まちラボフューチャーセッション」
(以下セッション)で 立ち上がった
「北渋festival(オペラ通りで音楽祭)プロジェクト」は
初台の新国立劇場西側を南北に走っている
オペラ通りでのイベント開催をきっかけに
このエリアが持つ魅力を最大限に活用して
新しい地域ブランドの構築を目指すチームです。

今回はこのプロジェクトで活動されている
幡ヶ谷中町町会企画広報部長の中村通夫さんと
ササハタハツエリア在住で建築設計事務所に勤務し、
まちづくりに造詣が深い清水有さん
にお話を聞いてきました。

右:中村通夫さん 左:清水有さん

右:中村通夫さん 左:清水有さん

ササハタハツ新聞
こちらのチームは、初台のオペラ通りや東京オペラシティ、新国立劇場でのイベントの開催を目指していますね。どのようなイベントを企画されているのか教えてください。

中村さん
今のところオペラ通りの完成記念日である10月10日ごろの開催を目指して調整しています。内容は、芸術系のイベントやマルシェ。マルシェではクリエイターや近隣の住民、子どもたちの作品展示も。またオペラ通りを封鎖して来場者が気軽にわいわい楽しめる空間も作りたいと思っています。

北渋festivalのイベント資料

北渋festivalのイベント資料

ササハタハツ新聞
とても大規模なイベントですね!立ち上げの経緯について教えてください。

中村さん
実はこのプロジェクトは昨年度のセッションから試行錯誤を繰り返して今に至っているんです。

ササハタハツ新聞
お二人は2018年度「ササハタハツまちづくりフューチャーセッション」の水道道路・広域ブロック(※1)に参加され、水道道路活用のアイディア創出や運営方法の検討などを議論されていましたね。

中村さん
そうです。昨年度は水道道路周辺でのイベント開催を目指して活動していました。ですが、水道道路の管轄が東京都ということもあり、なかなか企画が進展しなかったんです。それが今年度になって、初台には、新国立劇場という素晴らしい施設があることや、新国立劇場に隣接するオペラ通りが渋谷区の管轄だということに気が付きましてね。そこを新たな拠点にしたら面白い仕掛けができるんじゃないかと思ったんです。

ササハタハツ新聞
新たな開催場所を見つけたことが再始動につながった、と。

清水さん
中村さんから新しい場所の提案を聞いた時に改めて「本当にやりたいことは何なのか」って考えてみたんです。僕は仕事で建築に携わっていますが、都市計画でも建築でも、これからは大勢の人や大量のモノを対象にした器を用意するだけではなく、ひとりひとりの主体的行為に注目し、それが実現できるような場を提供することが非常に大切だと感じています。さらに、 まちの中で近くの人同士がつながり、なにかやりたいと思った時に反応できる場があるというのは、まちの質や魅力、居心地の良さに寄与すると思うんです。そう考えると、道路を活用したイベントを開催すること自体に意味があるんだと改めて気が付いて、それこそがやりたいことだと思ったんです。

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ササハタハツ新聞
オペラ通り周辺を活用すると聞いた時、どのように思われましたか?

清水さん
昨年度、水道道路を開催場所に決めたのは“まちが横につながっている”ということに魅力を感じたからなんです。オペラ通りや新国立劇場も場所として十分魅力的ですし、加えて道路の管轄が渋谷区であり、交通や安全等の観点からも実現できそうだと感じましたね。

ササハタハツ新聞
これまでの経験があったからこそ現実化への道も見えたんですね。
新しい場所の魅力について、詳しく聞かせてください。

中村さん
まずね、新国立劇場の建物が本当に素晴らしいんですよ。甲州街道に面した池の上に両側に階段がついたステージのような空間もある。歩いているだけで「こんなことができそう」ってアイディアがどんどん浮かんでくるんです。

清水さん
オペラ通りも気持ちのいい道でね。片側一車線なのに車通りが少なくて、水道道路沿いにテニスコートがあって、視線が抜けて空が広いんです。すごく素敵な写真が撮れるんですよ。

中村さん
オペラシティのガレリア(※2)もいい写真が撮れるよね。ここで写真教室やったり、近隣の美容系・服飾系の学校の皆さんにファッションショーをやってもらったりとかも面白そうだし。

清水さん
芸術や音楽をテーマにした企画はこのエリアの特性を生かせそうですよね。

ササハタハツ新聞
アイディアがとめどなく出てきますね!お二人がこのプロジェクトを楽しんでいるのがすごく伝わってきます!

中村さん
新国立劇場や東京オペラシティの活用では、それぞれの管理運営団体が既に東京都の「東京のしゃれた街並みづくり推進条例」での「まちづくり団体」(※3)に登録して活動しています。それらの団体と連携して様々な仕掛けができたら、もっと素敵なまちになると思うんです。それと、これは私の個人的な思いが関係しているんですけど、私は生まれてからずっと幡ヶ谷に住み続けていて、だんだんまちの元気がなくなっていくのを感じていたんです。昔からあった自然も少なくなっていくし、地域のコミュニティも停滞している気がしていて。そういう状況を少しでもいい方向に持っていけたらという思いもあって今回のプロジェクトを立ち上げたんです。

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ササハタハツ新聞
様々なまちの課題を感じていたんですね。

中村さん
それからもう一つ、アメリカ合衆国のオレゴン州にあるポートランドという都市に何度か行く機会があって、そこのまちづくりを知ったのも大きかったですね。あそこは倉庫街とか鉄道などを活用してまちを再建したらしく、今や全米一住みやすいまちだと言われるぐらい大きく様変わりしたそうなんです。

ササハタハツ新聞
ポートランドは革新的なまちづくりをした都市として注目されていますよね。

中村さん
それを知った時に「やっぱりまちってつくれるんだ」と、人がちゃんと意識をもっていればできないことではないんだと、まちづくり自体に可能性を感じたんです。特に笹塚、幡ヶ谷、初台周辺は渋谷区の中でもいい意味で手を入れられるところが多く残っているし、長谷部区長も力を入れてくれそうだからね。いろんなアイディアを出せばもっと可能性が広がるんじゃないかと思っているんです。

ササハタハツ新聞
プロジェクトのベースにはそういった思いがあったのですね。
このプロジェクトではイベントをきっかけに地域ブランドの構築も目指されていますよね。

清水さん
北渋ブランドの構築をビジョンとして掲げていて、内容は大きく3つあります。

北渋projectのビジョンを伝える資料

北渋projectのビジョンを伝える資料

ササハタハツ新聞
北渋とは渋谷区の北側という意味ですね。

清水さん
はい。これまでのセッションでは笹塚から初台の緑道と水道道路という場所での切り口、やりたいことでの切り口でまちづくりの議論が進んできたけれど、商店会や町会といった既存のコミュニティも含め、渋谷区北側のエリアを包含する新しい概念があるといいなと。「北渋」という言葉、響きにはその可能性を感じました。

清水さんが話しながらサラサラっと描いてくれた「北渋」のイメージ図。

清水さんが話しながらサラサラっと描いてくれた「北渋」のイメージ図。

中村さん
「北渋」というゆるいつながりの中で、様々な連携ができたらもっと面白いことになるんじゃないかと思うんですよね。
もちろん今頑張っているコミュニティも多いから、そういったところはこれまで通り個性を発揮してもらって、それとは別で北渋というつながりの中で何かできたら面白そうだなと。例えば今回のイベントをきっかけに定期的にいろいろな場所で道路を使ったイベントができたらいいなとも思っているんです。若い人たちがアイディアを出し合ってまちで活躍できるような場が増えたらいいなと。

清水さん
今住んでいる人、特に子どもたちに「このまちに住んでよかった」と思ってもらいたいっていうのもありますね。そう思ってもらえるようにするのも大人の役目だと感じています。

 

現在、プロジェクトの中心的なメンバーは6名ほどで、
清水さんがリーダーを務めます。
そして関係各所との調整などは
中村さんを中心に活動されているのだとか。
他にもイベント企画やデザイン等
様々な特技を持った人たちが集まっているそうで
「こういった人たちとの出会いがプロジェクトを大きく前進させた」
と清水さんは言います。

ちがいをちからにかえたまちづくりが、着実に動き出しています。

 

 

※1 2018年度のササハタハツまちづくりフューチャーセッションでは「緑道ブロック」と「水道道路・広域ブロック」の2つの分科会があり、参加者はどちらかに属して議論を進めた。https://www.city.shibuya.tokyo.jp/kankyo/machi/sasahata/201801_1kai_after.html

※2 オペラシティと新国立劇場をつなぐ階段部分。ガラスを使ったドーム型の天井が特徴的。

※3 東京都内で、個性豊かで魅力ある街並みづくりを進めることなどを目的とした「東京のしゃれた街並みづくり推進条例」において、地域の特性を生かし魅力を高めるまちづくり活動を行う団体が「まちづくり団体」として登録する制度が整備されている。団体に登録すると、公開空地を活用した公益的イベントの申請がしやすくなるなどメリットがある。https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/seisaku/fop_town/machidukuri.pdf

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