中学生の探求学習最前線⁉ 代々木中学2年生シブヤ科最終発表会

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現在、渋谷区立小中学校では「シブヤ科」という科目が存在しているのをご存知でしょうか。令和3年度から全区立小中学校でスタートしたもので、「自分が住み、学ぶ渋谷区や地域のことをもっと知ることで、愛着や誇りを持つ」「未来の渋谷の街の創り手として、主体的に地域社会の形成に参画する人となる」。そんな児童・生徒を育てることを目指す科目です。

「シブヤ科」で扱われる内容は、その学年や学校によってさまざま。「渋谷のハロウィーン」「若者・ファッション文化」など渋谷ならではのテーマもあれば、「防災」「まちづくり」「環境」など大きなテーマの中で渋谷らしさ、学校周辺の地域らしさを見つけていくことも。すべての区立小中学校の児童・生徒が、自分たちなりの目線で「渋谷」や「地域」について考えているということなのです。

ササハタハツエリア内にある渋谷区立代々木中学校では学年ごとにミッションを設定し、取り組んでいます。2021年度、1年生は「人を知り、自分を知る」。2年生は「渋谷のまちについて、解決できる問題を発見し、解決策をプレゼンする」。3年生は「シブヤの魅力を世界に発信する」。人→まち→世界と、学年ごとにミッションが広がっていく流れです。地域密着メディアとして、今回は「まち」に着目した2年生の最終発表会を取材させていただきました。

体育館に集まった2年生のみなさん。

一人一台タブレットを最大限活用して進められたシブヤ科の授業

コロナ禍が続き、一度は延期になったという最終発表会。各クラスから選出された代表8チームがプレゼンを行います。代表チームの選出も、そして最終発表会の優勝チーム決定も渋谷区立小中学校の児童・生徒が1人1台貸与されているタブレットのアンケート機能を活用します。

それだけで驚いてはいけません! ファシリテーターのひとりとして2年生のシブヤ科に関わった植野真由子さんによると、各チームで見つけた課題の解決策にたどりつくための関係者インタビューもオンラインが多く用いられたといいます。プレゼンのための資料作成にもタブレットを活用。中学生がタブレットを使いこなして完成させたプレゼン資料は、大人とくらべても遜色のない出来栄えで、それでいて中学生ならではのフレッシュな感性を感じさせるものばかりでした。

植野さんによるふりかえり。「とにかくやってみる!」精神のもと、進められてきたのがわかります。

ラップ、寸劇、動画、3D設計図…。中学生のプレゼン内容の充実ぶりに脱帽!

驚かされたのはプレゼン資料の完成度だけではありません。プレゼンの内容も、テーマに即したラップあり、クイズあり、寸劇あり。観る側を飽きさないエンタメ精神あふれるコンテンツの数々が織り交ぜられていました。

中学2年生といえば、思春期のまっただ中で、何をするにも照れくさく、ついカッコつけてぶっきらぼうになってしまう。そんな中学生像はもはやひと昔前なのでしょうか。「代っ中(代々木中の愛称)」の中学2年生は、エンタメ性を熟知し、性別も関係なくチームメイトと力を合わせ、先生とも和気あいあいとした雰囲気があることを発表会の様子から感じました。

スライドを背景画像に使いながらの寸劇。衣装や小道具も凝っていました!
ラップってこんなふうに自然にできてしまうものなのでしょうか?Z世代恐るべしです。
このチームを担当していたファシリテーターさんが少し教えただけでマスターしたという3D設計図。さすがはデジタルネイティブ世代!

いずれも甲乙つけがたいプレゼンばかりでしたが、アンケートフォーム機能を使って、生徒のみなさん、各クラスに伴走してきたファシリテーターなどが投票を行い、栄えある優勝、準優勝チームが決まりました。

ササハタハツ新聞も投票させていただきました。投票も結果もリアルタイムで進められます。

ダントツ優勝を勝ち取ったのは、中学生にとって身近な「校則」をテーマにしたチーム

優勝は「校則」をテーマにした1組岩下班のみなさん。中学生にとって日々直面し、課題を感じているはずの「校則」について「校則は本当に必要なのか?」という問題提起にハッとさせられた同級生も多かったのかもしれません。

公立中学校でありながら校則を全廃したとして注目を浴びている世田谷区立桜丘中学校の副校長にインタビューを行い、「校則がなくても校内の秩序が荒れたり、先生が困ったりすることはない」ことを知った彼ら。そのうえで、代々木中学の生徒たちにもそれが可能なのか? という投げかけはなかなかセンセーショナルでした。

校長先生から賞状をいただきました。

惜しくも準優勝だったのは、4組半田班。「タバコのポイ捨て」をテーマに、ポイ捨てを防ぐような吸い殻用のゴミ箱を考案しました。このチームが突出していたのは、ポイ捨てをする人を表現した「再現VTR」。なんと出演しているのは先生!(笑)ここからも代っ中の先生と生徒の関係の良さがうかがえます。

笑いを交えた動画で見る人の気持ちをつかんでおいてから、吸い殻入れのアイデア発表と、単に笑わせて終わりではないぎっちり内容の詰まったプレゼンでした。

緊張気味だったところ「自然な感じでいいよ~」とのリクエストに応えてくれました。

シブヤ科で学んだ中学生たちが、実際に「まち」を変えていく⁉

発表後、校長先生は講評として、寸劇など工夫を凝らしながら、取材もきちんと行い、根拠に基づいた提案だったことを評価。「みんなの力で、実際にまちを変えていってほしい」と期待をこめた言葉が聞かれました。

代々木中学校・川上弘文校長。学校ホームページからの発信も熱心に行っていらっしゃいます。

これだけの取材力、提案力をもってすれば、自分たちが住む地域の大人たちと協力することで、まちを変えていくことも決して不可能ではないと感じます。部活に勉強に多忙な毎日だと思いますが、シブヤ科をきっかけに、自分たちのまちに関わろうとする中学生が増えてくれたら、きっと彼らのパワーでまちはもっとよくなるに違いない。そう感じました。

プレゼンした内容を実現したいと思う中学生がいるなら、ササハタハツ新聞もぜひ協力したいです!

選にはもれたものの、LGBTQの発表が素晴らしかった4組冨永班(チーム名:Re_HACK)のみなさんには、ササハタハツ新聞がナビゲーターを務める渋谷のラジオ「渋谷商店部~お店に行こう!~ 幡ヶ谷・笹塚ブロック」にゲスト出演していただきました。中学生らしい瑞々しいトーク、お聞きください。

https://note.com/shiburadi/n/n3861805387b5?magazine_key=ma3052828792d

代々木中学校シブヤ科

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