子どもを産んでみて気がついたことのひとつが
「地域との接点がない!」だった人は
少なくないのではないでしょうか。
私もそのひとりです。
子育てをするには、地域の小児科情報、
遊び場情報などが欠かせません。
ネット検索をして見つかるのは
所在地や営業時間など基本的な情報だけで、
利用した人にしかわからない感想を集めるには
やはり地域で子育てする人とのネットワークが必要に。
もし地域の先輩パパママコミュニティとつながり、
情報のやりとりができるツール(手段)があれば、
もっと地域での子育てがしやすくなり、
地域への愛着も生まれるはずです。
このたび「こんなツールがあったら」を叶える
地域SNSアプリが
『ササハタハツ(仮称)まちラボフューチャーセッション」の
いちプロジェクトとして、スタートすることになりました!
イタリア語で“広場”という意味を持つ
『ピアッツァ』というサービスです。
(https://www.lp.piazza-life.com/)
こちらは既に全国各地のエリアで展開されていて、
地域住民のつながり活性化に一役買っているそうです。
この『ピアッツァ』を立ち上げたのは矢野晃平さん。
矢野さんは『ピアッツァ』について
「単なるツールでしかありません」と強調します。
「単なるツールでしか」ない『ピアッツァ』が
どのように地域住民に活用され、つながりを活性化しているのでしょうか。
くわしく聞いてみました。
PIAZZA株式会社 代表取締役・矢野晃平さん
千葉県生まれ。幼少期をオランダで過ごし、中学生で渡米。高校生までアメリカで過ごす。カナダの大学では、造力学、都市設計を学ぶ。帰国後、証券会社、オンラインゲームの開発・配信を行う企業を経て、2015年5月にPIAZZA株式会社を設立。2児の父。
地域コミュニティにつながりにくい人にも、つながりが持てる機会を
ササハタハツ新聞
地域に特化したSNSアプリを立ち上げようと考えたのは、矢野さん自身の経験がきっかけになっているそうですね。
矢野さん
はい。僕は幼少期を海外で過ごすことが多く、地元のコミュニティに溶け込むことに苦労しました。15歳のときに『街並みの美学(岩波現代文庫)』という本に出会い、都市化が進む街にこそ、人と人とのつながりを生む“広場”という存在が必要では?と思うようになりました。
その後、社会に出て結婚をして2児の父親になったとき、2人目の子どもが事故でケガをしたことがありました。そのとき、名前も知らない同じマンションのご近所さんが声をかけてくれたんです。たったそれだけで、心から救われた思いがしました。それと同時に、これだけITが発達して世界中の人とつながれるのに、地域の人も、地域のお店も情報も知らない。自分が住んでいる行政の方々との接点もないことに疑問を感じたんです。そして、今の時代だからこそ、同じ地域に暮らすさまざまな人が交じり合える“広場”がオンライン上にあってもいいのではという発想が生まれたのです。
ササハタハツ新聞
そこから『ピアッツァ』を始めるにあたって、500人に街頭インタビューをされたというエピソードを聞いたのですが、本当ですか!?
矢野さん
はい(笑)。そもそも地域をつなぐSNSアプリが本当に必要なのかという疑問があったんです。もしかしたら既存のSNSサービスで事足りるかもしれないし。6カ月くらいかけて、地域のいろいろな集まりに参加させていただいたり、商店の方に飛び込みで話を聞かせていただいたりしました。そこから見えたのは、主に30、40代の子育て世帯の方々が暮らしの中で何かのつながりを求めているということでした。一方、商店の方々も、地域住民に告知するのにチラシくらいしかツールがないことに悩まれていました。もちろん、チラシが悪いわけではなく、もっと効率的に告知をする方法があるのではと悩まれていたんです。
ササハタハツ新聞
地域に向けて情報発信したい側も、情報を受け取りたい側も互いに困っているんですよね。どちらの気持ちも分かります!
矢野さん
そうですよね。今一番、日本で増えているのは単身世帯なんです。子どもがいると子育てをきっかけに地域とつながることができますが、単身の方はそれが難しい。健康な間はそれでもいいのかもしれませんが、いざ自分が病気やケガをしたり、家族の看病・介護が発生したり、一人では抱えきれない課題が発生したときに、自分の街と少しでもつながりがあれば、暮らしやすさにつながりますよね。
ササハタハツ新聞
以前、初台の緑道でイベント開催のお手伝いをしたときに、単身で住まれている方から「地域の人と顔見知りになる機会が少ないので、こういうイベントはうれしい!」と声をかけていただいたことがありました。単身世帯の方が、気軽に地域コミュニティにつながることができる仕組みは重要ですよね。
矢野さん
そうなんです! ただ、いきなり「がっつり町内会・自治会に参加しましょう!」と言われるとちょっと抵抗がありますよね。0か100かではなく、もう少しグラデーション的に地域と関われたらと。僕自身も人見知りなので、地域コミュニティになかなか入れない気持ちはよく分かるので……。
ササハタハツ新聞
えっ!? 500人にインタビューした人が人見知り!? 全くそう見えませんよ!
矢野さん
いやいや! 僕みたいな人見知りでコミュニティと接点を持ちにくい人も、街とつながれるんじゃないか? と思えるようなサービスを作りたくて立ち上げたのが『ピアッツァ』なんですよ。僕の夢は、街に多様性を生むことなんです。子育てをしている人、そうでない人、それぞれにとって居心地がいい街は、誰にとっても過ごしやすい街なんだと思います。
地域、行政がワンチームでやらないと地域SNSは盛り上がらない
ササハタハツ新聞
町内会の話が出ましたが、町内会・商店会など、最前線でまちづくりをしてくださっている人たちが高齢化して、次に続く世代が見つからないという悩みもよく聞きますね。
矢野さん
僕たちもそういった声は耳にします。『ピアッツァ』は、ただサービスを提供して終わりではなく、行政や鉄道会社など地域に密着した企業、既にある地域コミュニティと連携して運営するのが特徴です。麻布の町会、江東区や千葉の団地の自治会などシニアの方が中心になって活動する団体と連携している例もあります。江東区に「豊洲睦」という祭礼でのお神輿の管理運営を行う団体があるのですが、神輿の若い担ぎ手がいないという悩みを持たれていました。今まではお神輿練習会をやると告知をしても年配の方が10名程度しか集まらなかったのが、『ピアッツァ』で告知をされるようになったら、若い方や子どもが30~40名来るようになったそうなんです。これは僕がとても好きな事例です。『ピアッツァ』が新しいものを作るのではなく、既にある街のいいコミュニティ、いい行事をより多くの人につなげるツールになれたことがとてもうれしくて。ササハタハツをはじめ、ほかの地域でもこういったことができたらと思います。
ササハタハツ新聞
地域SNSが盛り上がっていくには、既にある地域コミュニティとの連携が欠かせないということなんですね。
矢野さん
そうなんです! 『ピアッツァ』は単なるツールであって、それ以上でもそれ以下でもない。仕組みだけを作って「はい、できました。使ってください」では盛り上がるはずがなくて、コミュニティを作るってものすごく泥臭いことなんですよね。自分たちも一緒になって、地域の方々、行政の方々と連携しながらワンチームとしてやっていかないと絶対にうまくいかない。なので、『ピアッツァ』をいきなり全国すべての地域で展開するのではなく、エリアを絞って一つずつ立ち上げていくようにしています。実際「うちの地域でやりたい」とお声がけいただいても、別の地域で手一杯なときは、お断りすることもあります。
ササハタハツ新聞
なんとお断りも!! PIAZZAさんの本気ぶりが伝わりますね。
そんな中、ササハタハツ地域でやろうと思われたのはどんな理由があるのでしょうか。
矢野さん
ササハタハツ地域でこれから人口の流入が増えるとか、行政として都市開発に注力されるとか、そういったデータもありましたが、僕たちが「これは」と思ったところは2点あります。一つはユーザーさんから「渋谷区でもやってほしい」という要望が何件もあったこと。もう一つは渋谷区の協力があり、『ササハタハツ(仮)まちラボフューチャーセッション』とつなげていただけたことです。行政の方、地域の方とチームとしてご一緒できるのは大きいです。「地域をよくしよう」と活動されている方がたくさんいることは、ササハタハツ地域の財産であり、魅力だと思います。
街のコミュニティやつながりを数値化して評価していきたい
ササハタハツ新聞
『ピアッツァ』が地域でどれだけ利用されているかを測る指標として、ユーザー数やビュー数ではなく、コミュニティを数値化した「コミュニティバリュー(※1)」というものを用いているのがおもしろいなと思いました。その狙いはなんでしょう?
矢野さん
コミュニティや地域でのつながりを作っても評価されにくいというのが、まちづくりの大きな社会的課題のひとつですよね。これからの「まちづくり」は建物などハードを作るだけでなく、ソフトも大事にしていく必要がある。そのときにソフトであるコミュニティの形成やつながりを測る指標がないと、産業や市場として成り立たず、まちづくりのプレーヤーである人たちにもお金が回ってこない。そのため地域コミュニティをつくる活動ができなくなってしまいます。
ササハタハツ新聞
なるほど。地域を活性化させようと頑張るプレーヤーの方が、マネタイズがうまくいかなくて、やがて力尽きてやめてしまうという課題は顕著ですよね。
矢野さん
これからの街は「建てる」から「運営する」ことの比重が高くなっていきます。既にさまざまな産業でも、その変化が見られていて、自動車も新車販売よりも中古車販売や整備などアフターマーケットの市場のほうが大きいです。ゲームもソフトを売り切って終わりではなく、プレーヤーが飽きずに遊べるような運営が欠かせません。マンションも販売よりも、入居後の運営やメンテナンスなどのマーケットの方が今は注目されています。僕たちもソフトを大事にするまちづくりを重要視して、コミュニティもきちんと評価していく気持ちを示していきたい。「コミュニティバリュー」を用いているのは、そんな思いからです。
ササハタハツ新聞
『ピアッツァ』というツールを作って終わりではなく、「コミュニティを作っていきたい」という思いは、オフラインの施設の運営をされていることからも感じられますね。現在は、中央区勝どきの「グロースリンクかちどき」(http://growthlink.jp/)と日本橋の「Flatto」(https://www.flatto-nihonbashi.jp/)の2カ所を運営されているとか。
矢野さん
私たちも創業時は、アプリひとつですべてが解決できると思ってしまっていました。でも、1年やってみて、アプリはただのツールであって、コミュニティはリアルなものだとわかったんです。リアルな接点が地域のコミュニティを盛り上げていくためにいかに重要かを痛感して、それを実現する一つの方法として、コミュニティ施設を運営することにしました。アプリもコミュニティ施設も一つの“広場”の形です。私たちのサービスは「街のコミュニティ」を作ることであって、「街のアプリ」を作ることではない。それは一貫してます。
使う人がササハタハツをより好きになれる地域SNSに
ササハタハツ新聞
ササハタハツでは、『ピアッツァ』をどんなふうに活用してもらいたいですか?
矢野さん
ササハタハツらしさが出ればと思います。主役は決してアプリではなく、使ってくださる街の皆さんです。街によってカラーが出るのが当然で、既に活用いただいている地域でも、勝どきのように子育て世帯が多いところもあれば、上野のように訪問者の登録が多いところもあります。ササハタハツの方々に実際に使ってみていただいて、「こんな機能が欲しい」「こんな使い方はできないか」という意見があれば、ぜひ聞かせていただきたいです。カスタマイズできるところはすぐに対応したいと思います。住む方、関わる方が『ピアッツァ』を使ってくださることで、よりササハタハツのことを好きになってもらえたら……。そんな思いでやっています。
1月24日よりPIAZZA株式会社と渋谷区が協力を開始したことはプレスリリースとして広く伝えられました。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000035.000016981.html
矢野さんの実体験や『ピアッツァ』の運営について伺った話は、
これまで『ササハタハツまちづくりフューチャーセッション』や
今年度の『ササハタハツ(仮称)まちラボフューチャーセッション』で
浮かび上がってきた地域課題とも重なります。
きっと『ピアッツァ』アプリの導入がその課題解決に
手を貸してくれると感じます。
『ピアッツァ』は無料で利用できるのでぜひ登録を!
登録の際に、「ササハタハツエリア」が選択できます。
【ピアッツァの登録方法】
ピアッツ公式サイト(https://www.lp.piazza-life.com/areas/24?from=2020sasa_paper)にアクセス、「新規登録」からメールアドレス等を入力して登録してください。
スマートフォン、タブレットからはiOSアプリ、Androidアプリの利用が便利です。
※1 ユーザーごとの『ピアッツァ』アプリの利用動向に基づいて、「つながりの数」「活動(参加・貢献)の量」などを加味し、その時点での街のコミュニティを数値化したもの。