2017年より渋谷区まちづくり課主催で行われている
「ササハタハツまちづくりフューチャーセッション」
今年度2回目となるセッションでは
前回のセッションで宣言された「(仮称)まちラボ」の立ち上げに向け、
世界各国と国内の事例を学ぶ勉強会とワークショップが行われました。
イントロダクション
まちづくり課・齋藤 課長からは、今年度立ち上がる「まちラボ」について「住民の方、企業の方、いろいろな方が交わりあうことでコミュニティが活性化する。ササハタハツ地区でこれまで進んできた活動と、現在どの活動にもかかわってきていない人が交わりあえるようなコミュニティのハブ機能を持たせたい」と話がありました。
また、まちづくり課・小林さんからは今年度のロードマップが改めて提示され、今年度の流れが再度確認されました。
先進事例を学ぶ
「まちラボ」にもつながる新たな試みとして、先進事例を学ぶ講演が行われました。今回は東京大学先端科学技術センター助教であり、タクティカル・アーバニスト(都市戦術家)の肩書を持つ泉山塁威氏が、世界各国と日本のパブリックスペース活用事例を多数紹介してくれました。
◆公共空間は地域、民間が運営するものに
いずれも
●車中心だった街が人中心に変わってきている
●公共空間は行政のものだったのが、人が使うことで価値が生まれる
●いいパブリックスペースを作るには、地域や民間が運営を担い、行政が応援するスタイルがよい
ということが共通しています。
また、鉄道の線路跡を使ったリニアパークに関する事例として、韓国やシンガポール、シドニーの事例も。代表的なものはニューヨークの「ハイライン」ですが、「ハイライン」も公園NPOやいくつものエリアマネジメント団体がそれぞれの目的に合わせて役割分担して運営しているのが特徴です。
◆「エリアマネジメント」しないと地域の価値は下がる一方
続いてのテーマは「エリアマネジメント」。人口が減少・縮退していく時代、何もしないと地域の価値は下がっていく一方だといいます。
エリアマネジメント=地域を経営することで、エリアの価値を高め、人が遊びに行く、買い物をする、引っ越しをする、働く場所として選択肢に入れてもらう、選んでもらうことが必要になってきます。
エリアマネジメントをすることで、来街者が増えたり、市民の満足度が上がったりするだけでなく、因果関係は不明ですが、商店の売り上げが上がったり、地価が上昇したり、空き室率が低下するという効果もあると言われています。
エリアマネジメントの事例として「東京駅・大丸有地区の丸の内仲通り」「虎ノ門の新虎通り」「兵庫県姫路市の姫路駅北駅前広場」「埼玉県鴻巣市のすみれ野中央公園」が紹介されました。
◆誰かにやってもらうのではなく、自分たちでやる!
エリアマネジメントを手がける団体として、公・学・民が連携する「アーバンデザインセンター」も最近増えているそうです。学校が関わることで、開かれた拠点が持てること、まちづくりの専門家が参加するというメリットが。現在全国に20のアーバンデザインセンターがあるそうです。住民が主導したエリアマネジメント事例として紹介されたのが、メルボルンの郊外・ポイント クックでの道路を止めて人工芝を敷いた場所を作るというプロジェクト。移民が多く、新たに開発された街で、住民同士のつながりを作ろうと動いたのはスーザンさんというひとりの主婦でした。
「私たちの辞書にNoはない」「私たちはDoer(=やる人)」と、一軒一軒に声をかけ、やがて大きなムーブメントを起こしました。誰かにやってもらうのを待つのではなく、自分たちでやるという気持ちはエリアマネジメントでとても重要なものになります。
◆まずはひとりひとりがやりたいことを妄想することから
最後にパブリックスペース活用で大事なことを伝えてもらいました。出発は個人がVISIONを持つこと。自分が何をしていきたいのか妄想を膨らませていくのです。次に現状を把握すること。VISIONと現状の間にあるギャップを埋めていくために「すぐできること」「近いうちにできること」「時間をかけてやっていくこと」をリストアップして、「すぐできること」から実験的にやっていくと、少しずつ階段を上がっていくことできるそうです。
ササハタハツの地域リソース紹介
まちづくり課・真柴さんから、ササハタハツ地域にありアイデアの実験を行う場所として活用できそうなリソースの紹介がありました。中野通りと水道道路の交差点付近にある公衆トイレをリニューアルする「幡ヶ谷トイレプロジェクト」ではスペースの一部にギャラリーを作ることも検討されており、これもアイデア実験の場に使えそうです。
分科会セッション
休憩を挟んでの後半は5つの分科会に分かれて、「ササハタハツを盛り上げていくために実施したい、企画アイデア(キーワード)」を出しあいました。出たアイデアについて、「斬新さ」「共感できる」「実現性が高い」という観点からチーム内で投票を行い、得票数が多かったアイデアが発表されました。
福祉・健康・スポーツ分科会
●リハビリ機器を使った運動会
●ウォーキングサッカー
年齢や障害の有無を問わず楽しめるものという観点からアイデアを出した。障害を持つ方も、健常者も、リハビリ機器を使うことで同じように運動会ができると考えたのが「リハビリ機器を使った運動会」。障害の有無を問わず、みんなで楽しくことができる。
「ウォーキングサッカー」は、歩きながらボールを浮かせないようにやるサッカー。体力がない方も、高齢者も、子どもも一緒に楽しめる。これを道路を止めてやったらおもしろいのではないか。
地域ビジネス分科会
●ポイントを地域のためにつかう仕組み
●道路を占有してビジネスマンのランチや本を読む場づくり
まちづくりで何をやるにもお金が必要であり、ビジネスとして回すことで永続性が出ると考えた。「何をやるにも、街づくりにも、お金が必要!ビジネスで回さないと永遠には続かない。もったいない場所が多いので、まずは道路を使いたい。そして使うお金として地域通貨を実現したい。ただ買ってポイントをもらうのではなく、あげたい人にあげられるような仕組みをアプリを使って実現させたい。道路で商売をすることはハードルが高いが、寄付されたポイントを使うなら許可がおりやすいのではないか?
情報発信分科会
●掲示板をデジタル化する
●子ども記者による情報発信
「掲示板をデジタル化」することで紙のゴミが減るというエコな面も。現在町内の掲示板にチラシを貼ったりはがしたりしている方の労力も節減できる。またデジタル化することで、それぞれの区民が自分が欲しい情報を得ることができる。スペースの心配もなく、多数の情報が発信できる。「子ども記者による情報発信」は子ども目線で街を歩いて、子どもならではのおもしろい情報、スポットを発信してもらう。大人も今まで気づかなかった街の魅力に気づくきっかけになるはず。
市民コミュニテイ活動分科会
●道路でオープンカフェin初台大通り
●まち遺産探し
「道路でオープンカフェ」は初台町会の山崎会長イチオシのアイデア。オープンカフェの場でパフォーマンスをしたり、キッズスペースを作ったり、オープンカフェをやるために街のゴミ拾いをしたり、タウンミーティングを行ったり、オープンカフェにさまざまなアイデアがつながる。「まち遺産探し」は街にある古い建物などの遺産を形があるうちに写真に撮って遺しておくもの。「幡ヶ谷トイレプロジェクト」で設置されるギャラリーに展示しておけば、懐かしい話に花が咲くのではないか。
商店街活性化分科会
●ラグビーやオリパラのパブリックビューイング
●公共の場でオセロや将棋をやる
ダントツで票が集まったのが「パブリックビューイング」。実際ラグビーワールドカップの際に、笹塚・十号通り商店街の「いこいの広場」で行ったところ、大盛況だった。来年はオリパラもあるので、ササハタハツのあちこちの公園や電気店の店先などでやることで、現在弱いと思われるササハタハツの情報発信にも役立ち、地域の認知度も上がるのではないか。あとは公共の場にベンチやテーブルを置いて、オセロや将棋をやったらおもしろいというものも。
条件が揃えばできそうなものばかり
分科会セッションで出たアイデアについて、泉山さんから講評をいただきました。「条件が揃えばできそうなものばかり。アイデアだけで終わらないためには、“できない”理由を探すのではなく、できるためににどうするかを考えること。小さなことでもやってみると世界が変わります。最初は道路を止めるのが難しければ、店先だけでやるのでもいい」とのことです。
おわりに
最後に、江端まちづくり推進担当部長が「ササハタハツの現在の動きを演劇に例えれば、演目と役者が揃ってきた。あとは『まちラボ』というプロデューサーをこれから作っていくこと、何よりも渋谷区がアイデア実現のための舞台を作っていかねばならない。区だけで実現できないものは関係各所と協議を重ね、プレイヤーのみなさんがストレスなく動いていけるようにしていきたい」と、区としての思いを伝えました。
来場者アンケート結果
今回もセッション終了後に来場者アンケートを実施しました。
「(仮称)まちラボ」への理解、関心が高まったとの回答が目立ちました。
また、泉山先生の講義が良かったとの意見も。